観たぞ!『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』



今日ご紹介は、ぜひ見て欲しい掘り出し物の一品です。



◇鑑賞日:2019年2月24日

◇一言感想:B級というには惜しい、練られた脚本と飽きさせない見せ場作り。クーンツを知らない人も楽しめる快作。

◇星3つ⭐︎⭐︎⭐︎(普通に楽しめます


  • 死者が見える事による苦悩と救済。代表的な所では『シックスセンス』や『ゴースト ニューヨークの幻』等多くの作品で語られてきたテーマです。本作も同じテーマの作品で、死者が見える能力を持った主人公が苦悩しながらも活躍するホラーサスペンス。低予算で作られて興行も振るわなかった為かあまり人目に付かなかった印象があります。しかしながらTSUTAYAの発掘良品コーナーにも取り上げられる掘り出し物なので、見かけたらご覧いただきたい作品です。
(あらすじ)
  • オッド・トーマスは南カリフォルニアの町ピコ・ムンドに住む20歳のコック。彼には特異な能力があった。死者の霊が目に見え、霊が伝えたいことがわかるのだ。ある日、オッドは勤務先のレストランで悪霊の取り憑いた男を見て、不吉な予感を覚える。彼は男の家を探し出して中に入るが、そこで数多の悪霊を目撃した。そして近日中に多数の犠牲者を出す、恐ろしいことが起きるのを知るのだった。
オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主 [DVD]:amazon

  • オッド・トーマスはアメリカの作家D・Rクーンツが手掛けたシリーズ。霊感を持つ青年オッド・トーマスの一人称で書かれた落ち着いた雰囲気のあるSFサスペンス・ホラーのシリーズ作品です。この主人公、霊感能力を持ったと言っても、死人と口が利ける訳ではないので、どこか哀愁があります。そんな彼が自身の非力に悩みながらも、義務感と正義感で悪しき者たちの策謀を止めるという一連のシリーズになっています。
  • 作家のクーンツは、日本でも同じみの作家さんです。SF小説からホラー、ミステリー、サスペンスなどジャンルミックスした手法で80年代から現在に至るまでベストセラー作家であり続ける、娯楽作品の王様です。スティーブン・キング、ロバート・R・マキャモンと並びモダンホラーの帝王として面白い物語を届けてくれます。『戦慄のシャドウ・ファイヤ』、『邪教集団トワイライトの追撃』などなど80年後半から90年代にかけて私も、だいぶお世話になりました。海外作家の本を好むきっかけになったのはきっとクーンツを読んだからです。

               戦慄のシャドウファイア〈上〉:amazon


  • 素朴な女性主人公が謎の武装集団に狙われるタイムリープ物の傑作『ライトニング』なんて、今読んでも、きっと徹夜必須ですよ。

                       ライトニング (文春文庫):amazon

  • クーンツの作品は、ジェットコースターのように物語の展開が早くて映像を意識した作風なので、『ファントム』や『ウォッチャーズ』とか今までも度々映像化されています。が、いかんせん予算の足りなさや、脚本のダメさから、ことごとく失敗しています。これじゃクーンツ先生も立腹だあ!とはいえ、家庭の人口知能AIが主人公の妻を妊娠させようと襲いかかる『デモン・シード』(77年)はしっかりと、幼い私のトラウマになっちょります。
Demon Seed [Blu-ray]:amazon
  • さて、本作に話を戻すとそんなクーンツ先生の久しぶりの映像化作品として、『GIジョー』や『ハムナプトラ』のスティーヴン・ソマーズ監督の手によりしっかり掘り出し物の作品に仕上がっています。主演は『ターミネーター4』や『スタートレック(09)』のアントン・イェルチン。残念ながら本作の後に、不幸な事故でお亡くなりになっています。ご冥福をお祈りします。脇を固める役者さんとしてヒロインには可愛らしいアディソン・ティムリン、トーマスの良き理解者の刑事にウィリアム・デフォーが主演しています。ていうか、こないだアトランティスという海の中で見かけたばかりだけれどな (笑)。
  • さて、本作の見どころはすばり、物語の運びとの上手さと、見せ場の巧みな画づくり。クーンツ先生の原作を踏襲しながらもわかりやすい導入時のオッド・トーマスのわかりやすいキャラクター説明や、死霊つきの題材を活かしたサスペンスフルな物語など脚本のセンスが光ります。加えて、追跡シーン、銃撃戦、クライマックスとアクションやホラーとしての場面演出が上手なので、中だるみが少しあるものの、見ていて飽きないポップコーンムービーに仕上がっています。さらには鑑賞者の涙腺を緩ます、感動要素もありB級作品にはもったいない出来でした。
  • 残念なのは、やはり予算の少なさからくるチープさ。街に溢れだす悪霊のボダッハのCG等は頑張っていたと思うのですが、せめてあと少し予算があればというチープ感が満載なのです。後で調べたのですが、映画『オッド・トーマス』制作者側が、製作融資者に対して融資されるはずだった金額が支払われなかった結果に訴訟を起こしていたようですね。うーむ、勿体ないなぁ。

  • とはいえ、久しぶりのクーンツ作品の映像化としてなかなか楽しめる本作。皆様も配信サービスなどで見かけたら、ぜひご覧くださいませ。きっと楽しめますよ。っていうか、ロバート・R・マキャモン先生の作品は映像化しないのかなぁ!!とマニアの主張でしたとさ。


コメント

人気の投稿